木造住宅の弱点:シロアリ対策の必要性
※下記の画像や動画は令和7年5月の当社建て替え物件の画像データです。(福井市内)

はじめに
日本の住宅は、近年の高気密・高断熱化により、快適な住環境が実現されています。しかし、その一方で、外来種であるアメリカ乾材シロアリ(アメリカカンザイシロアリ)の侵入リスクが高まっています。このシロアリは、従来の地面からの侵入ではなく、飛来して建物の2階部分から侵入するため、従来のシロアリ対策では不十分です。本記事では、アメリカ乾材シロアリの特徴と、建物全体にシロアリ対策が必要な理由について詳しく解説します。
アメリカ乾材シロアリとは
特徴
アメリカ乾材シロアリは、北米原産の外来種で、乾燥した木材を好んで食害します。日本では1976年に東京都江戸川区で初めて発見され、その後、全国各地で被害が報告されています。このシロアリは、木材中の僅かな水分で生活する能力に長けており、乾燥した木材でも生息可能です。
飛来による侵入
アメリカ乾材シロアリは、有翅虫(羽アリ)となって飛翔し、建物の2階部分から侵入します。従来のヤマトシロアリやイエシロアリは地面から侵入するため、床下の対策で十分でしたが、アメリカ乾材シロアリは建物全体に対策が必要です。
※下記の画像は令和7年5月時点の当社建て替え物件の解体物件の写真です



高気密高断熱住宅とシロアリの関係
近年の住宅は、高気密・高断熱化が進み、人間にとって快適な住環境が実現されています。しかし、この快適な環境は、アメリカ乾材シロアリにとっても快適な環境となっています。高気密高断熱住宅は、温暖な気候で生まれ育ったアメリカ乾材シロアリにとって、最も快適な環境であり、被害が増加する可能性が高いとされています。
このような住宅は、24時間換気システムや断熱材によって室温と湿度が一定に保たれやすく、木材の含水率も安定しています。つまり、アメリカ乾材シロアリにとっては繁殖と定着が非常にしやすい環境です。住宅の性能が上がることは人間にとっては利点ですが、逆説的に害虫にとっても都合がよくなってしまっているのです。
建物全体にシロアリ対策が必要な理由
従来の対策の限界
従来のシロアリ対策は、床下や基礎部分に薬剤を散布する方法が一般的でした。しかし、アメリカ乾材シロアリは飛来して建物の2階部分から侵入するため、床下だけの対策では不十分です。
また、薬剤の効果は年数が経過するごとに減退し、定期的な再施工が必要になります。対策範囲が限られていたり、メンテナンスが疎かになると、そこが侵入経路となり、瞬く間に内部まで被害が広がるケースもあります。


建物全体への対策の必要性
アメリカ乾材シロアリの侵入を防ぐためには、建物全体にシロアリ対策を施す必要があります。具体的には、構造材すべてにホウ酸処理を施すことで、シロアリから家を防御することができます。ホウ酸は、人体やペットに害を与えず、効果が半永久的に持続するため、安心して使用できます。
この処理を新築段階で行っておくことで、メンテナンスの手間を省きつつ、将来的な被害リスクを大幅に軽減できます。住宅ローンやライフプランの中にあらかじめ組み込むことで、費用的な負担も分散しやすくなります。
被害事例と復元困難性
実際に被害を受けた住宅では、以下のような問題が発生しています:
- 壁の中の柱が食害され、耐震性が著しく低下。
- 天井裏の梁や桁が空洞化し、構造の安全性が失われた。
- 室内の床板が陥没し、住環境が極端に悪化。
- 建具の建て付けが悪くなり、開閉が困難になる。
- 配線や配管付近が食害され、水漏れや漏電のリスクが発生。
これらの被害は、外見からはわかりにくく、発見が遅れることが多いです。そして、いったん構造材が食害されると、完全に元の状態に戻すことは極めて困難であり、多額の補修費用と長期の工事期間を要するケースがほとんどです。だからこそ、「食べられてから考える」のでは遅すぎるのです。万が一シロアリの被害を受けたときは日本国内のシロアリ処理をしてもほとんど効果が見らないため、費用をかけても効果はありません。唯一効果がある方法は『燻蒸・くんじょう』といって建物全体を大型テントでくるんで、数日かけていぶす方法がありアメリカではメインで採用されていますが、日本国内ではほぼ施工不可能です。なぜこの『燻蒸・くんじょう』をするのかというと被害を受けた場合、木材のどこまで侵入しているかを判定することができないため建物全体を燻蒸することで完全にシロアリを駆除することが可能です。(家をCTスキャンできれば可能ですが・・・。)
初期段階での徹底した対策の重要性
シロアリ対策は、「被害を受けた後」ではなく「建築前または建築時」に行うことが最も効果的です。初期段階で建物全体に防蟻処理を施すことで、長期にわたって安心・安全な住環境を確保できます。新築住宅では、基礎・柱・梁・床組などの構造材すべてにホウ酸処理を行い、2階や小屋裏にも対策を徹底することが重要です。
さらに、建物の構造設計においても、シロアリが好む湿気の溜まりやすい箇所を極力作らないようにする工夫が求められます。例えば、床下換気システムの検討床下断熱ではなくや基礎断熱採用の見直し、基礎コンクリートと土台木材が直接接しない構造、雨水処理の徹底など、建築全体でシロアリ対策を考えることが肝心です。このような被害が拡大している現在でも間違ったシロアリ処理をしていたり、営業マンの「ちしきふそくにより間違った説明を受けていたり、そもそもシロアリ処理をしていない等、住宅会社のモラルの低下が懸念されています。一生に一度しか建てることができない大切な住宅だからこそ、妥協しないシロアリ対策は必要不可欠です。シロアリ被害は他人事ではないのですから。
まとめ
アメリカ乾材シロアリは、従来のシロアリ対策では防ぎきれない新たな脅威です。高気密高断熱住宅の普及により、被害が増加する可能性が高まっています。建物全体にシロアリ対策を施すことで、安心・安全な住まいを実現しましょう。何よりも、「最初の一手」が住まいの未来を左右します。
特に注文住宅 を検討されている方は、設計段階から耐震 健康住宅 の視点とともに、家事楽 や ライフプラン を見据えた長期視点での防蟻対策を計画してください。