換気方法の種類とその効果:断熱性能を高めるだけでは意味がない
はじめに
日本の住宅がついに「断熱等級7」という世界基準の断熱性能を採用し始めました。しかし、いくら高い断熱性能を備えていても、適切な「換気システム」がなければその性能を十分に発揮できないどころか、快適性や健康を損なうことにもつながります。特に四季がある日本では、断熱と換気のバランスが家づくりにおいて極めて重要です。断熱性能のみを高めた住宅は建物の劣化を促進してしまいます。
本記事では、断熱性能と換気システムの関係を解説しながら、それぞれの換気方法の特徴と効果をわかりやすくお伝えします。また、現在の電気代高騰の問題にも触れながら、生涯コストの削減を実現するためのポイントをご紹介します。
目次
断熱性能が高い住宅のメリット
断熱等級7とは
断熱等級7は、2022年に新設された日本の最高等級であり、世界基準に匹敵する断熱性能を持つ住宅仕様です。断熱性能を高めることで以下のようなメリットが得られます:
- 光熱費の大幅削減:室内温度が安定し、冷暖房の使用を最小限に抑えられます。
- 快適な室内環境:冬は暖かく、夏は涼しい空間を維持。
- 健康的な暮らし:結露やカビを防ぎ、室内の空気を清潔に保てます。
日本は四季があり、地域によって気候が大きく異なります。例えば、冬の寒さが厳しい北陸地方の新築一戸建てでは、高断熱仕様が欠かせません。断熱性能が優れた住宅は、外気の影響を受けにくいため、一年中快適な住環境が整います。
換気システムの重要性
なぜ換気が必要なのか
住宅の気密性が高まると、空気がこもりやすくなり、以下の問題が発生します:
- 二酸化炭素濃度の上昇:呼吸で排出される二酸化炭素が蓄積し、集中力や健康に悪影響を及ぼす。
- 湿気の滞留:室内の湿気が抜けにくくなり、カビやダニの発生リスクが高まる。
- 化学物質の蓄積:建材や家具から放出される化学物質(VOC)が室内に留まり、シックハウス症候群の原因となる。
これらの課題を解決するためには、適切な換気システムが不可欠です。特に第3種換気方式で吸気口を閉じるケースが散見されますが、寒いからといって吸気口を閉じると特に結露が発生する環境において、室内で結露が発生しさまざまな箇所で結露が発生し建物を痛めます。長寿命な建物を実現するには、換気の設計をしっかり行うことが重要です。
換気方法の種類と特徴
第1種換気システム
特徴:機械を使って給気と排気を同時に行う方法です。高性能住宅に必須の換気方法です。
- メリット:
- 室内の温度を維持したまま換気が可能。
- 花粉やPM2.5などをフィルターで除去するため室内がクリーン。
- デメリット:
- 設置費用が高い。
- 定期的なメンテナンスが必要。
適している住宅:ZEH(セロエネルギーハウス)や断熱等級7の住宅。
第2種換気システム
特徴:機械で給気を行い、自然に排気を行う方法です。
- メリット:
- 室内の正圧状態を保つことで外部からの汚染物質を防ぐ。
- デメリット:
- 排気効率が劣る場合がある。
適している住宅:手術室や食品工場などの衛生を重視する建物。
第3種換気システム
特徴:機械で排気を行い、自然に給気を行う方法です。
- メリット:
- 設置費用が最も安い。
- メンテナンスが簡単。
- デメリット:
- 冬場に冷たい外気が直接入り、夏場には熱い外気が直接入る。
適している住宅:一般的な戸建て住宅やリフォーム物件。
全熱交換型換気システム
特徴:第1種換気の一種で、熱交換器を利用して外気の温度を調整して室内に取り入れる。
- メリット:
- 冬場は外気を温め、夏場は冷やして取り入れる。
- 高い省エネ効果で冷暖房費の大幅な削減が可能。
- デメリット:
- 導入コストが高い。
適している住宅:ZEH(セロエネルギーハウス)や断熱等級7の住宅。
断熱と換気のバランスが生む快適な暮らし
高断熱・高気密住宅の成功ポイント
断熱性能を活かしきるには、換気システムの導入と正しい運用が必要です。例えば、北陸地方の高性能住宅では、高断熱仕様に全熱交換型換気システムを組み合わせることで、冬の厳しい寒さでも暖かく快適な住まいを実現できます。注意しなくてはいけないのは、断熱性能だけを上げて、換気システムを検討しないことです。これは最も建物に対して危険なことで、建物を傷める最大の原因となります。
省エネ住宅で暮らしを楽しむ
光熱費削減の具体例
断熱等級7の住宅で全熱交換型換気システムを利用した場合、月々の光熱費は従来の省エネ基準の住宅に比べ40~50%削減できます。また、太陽光発電システムを導入すれば、さらに全体の光熱費を70%から80%削減することができます。太陽光システムそのものは長寿命なため、老後に大きな資産となり毎月の電気代を大幅に削減することができます。イニシャルコストを回収した後は心強い住宅設備となります。FIT(余剰電力売電制度)が終了する11年目に蓄電池を利用することで、太陽光発電システムとの強力な効果を実感することができます。今後も電気料金は上昇することから必須の設備といえます。
結論:断熱性能だけでなく、適切な換気システムを導入することで、快適で健康的な住環境を実現できます。
目に見えない地味な点ですがとても大きな重要ポイントですから、検討している住宅会社がどのような換気システムを採用しているのかしっかり確認しましょう。後からは施工することができないポイントですから、初期段階で導入が必要です。